気になる症状


胸の痛み


5つの胸の痛みの原因

 

胸部には、肺、胸膜、心臓、骨、神経、筋肉、一部の消化器臓器があり、その原因を把握することが治療の第一歩となります。

 

1.肺や胸膜の病気

 肺自体は痛みの神経がありません。痛みの神経は胸膜にあります。そのため、胸膜に関係する病気が痛みを感じます。

 

2.心臓や血管の病気

 

胸痛の中で、とくに生死に関わるため緊急の対応が必要になることが多いのです。

 

狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患(心臓の血管が詰まる病気)

 

狭心症は、労作時に胸部中央から左側にかけて締め付けられるような痛みや圧迫感があり、数分で消失します。時には首や肩などにも広がるような痛み(放散痛)や上腹部の痛みなどとして現れることもあります。

安静時、夜間や明け方の寝ている時に起こるようなタイプもあります。これらの痛みがよりひどく、持続時間も長く、冷汗や呼吸困難などのその他の症状を認めた場合は心筋梗塞を疑います。

 

大動脈解離(血管が裂ける病気)

 

胸痛は突然起こり、引き裂かれるような激しい痛みで、時間とともに広がっていきます。症状は血流の流れが悪くなる部分に現れ、意識障害をはじめ失神、胸痛、腹痛など様々です。ほとんどは動脈硬化が原因です。

 

3.神経・筋肉・骨の病気

 

肋骨骨折

 

外傷や過度の運動、激しい咳などで肋骨が折れたり、ひびが入ったりすることがあります。安静時は鈍い痛みを認め、体位変換、深呼吸や咳、押した時に痛みが増強します。

 

肋間神経痛・帯状疱疹

 

肋骨に沿って走行する神経を肋間神経といいます。この神経が何らかの原因で障害されて生じる突発的な痛みを肋間神経痛と言います。

痛みは片側性で強く、深呼吸や咳や体位の変化でも増強することがあります。原因の一つに、帯状疱疹があります。肋間にそって水ぼうそうのウイルスが潜んでいます。鋭く激しい痛みが局所的に現れ、水ぶくれのある発疹を伴います。その他、肋骨骨折や側弯症や脊椎の神経の圧迫によっておこることもあります。

 

悪性腫瘍

 

原発性(肺から発生するがん)または転移性(他の臓器から発生するがん)腫瘍が胸壁まで浸潤する(がんが広がる)と、持続性の強い痛みが生じます。

 

4.消化器の病気

 

逆流性食道炎

 

胸骨付近に生じる胸痛で、嚥下困難や胸やけなどの症状を伴います。

 

その他の病気

 

急性膵炎や胆のう疾患などで、胸部に痛みが放散することがあります。食事に関係することが多いです。

 

5.心因性によるもの

 

心臓神経症

 

検査で何も異常を認めないにもかかわらず、精神的負荷がかかった時に胸痛、動悸、息切れなどを認めます。過換気症候群でも同様の症状がみられることがあります。

 

 

様々な要因で発症する胸の痛みは、その原因を把握することが治療の第一歩です。

そのためには、痛みの内容を把握しておく必要があります。

 

(1)どのような痛みか

(刺すような痛みか、鈍い痛みか、圧迫されるような痛みか、締め付けられるような痛みか)、

(2)どこが痛いか

(左胸部か、前胸部か、背部か、首や肩に放散するか、局所的か、いつも同じところか)、

(3)どのくらい持続するか

(瞬間的か、数分か、数時間からそれ以上か)、

(4)どのような時に痛むか

(動いた時か、安静時か、体位を変えた時か、呼吸との関連があるか、食事との関係があるか)、

(5)ほかに症状があるか

(呼吸困難、発熱、冷汗、吐き気、嘔吐など)を知る必要があります。

 

これらの点が原因を推測するうえで重要なポイントになります。

 

どんな人に、どんなときに現れるのでしょうか?

 

胸痛で気を付けたいのは、中年~高齢者です。強い胸痛を訴えて見た目にも重症感がある場合は、躊躇せずに救急車を呼ぶようにしてください。呼吸困難や意識低下がみられる場合も緊急事態です。

胸痛のすべてが生命に関わるわけではありませんが、発熱やせき、皮膚の変化(赤みや水疱)、胸やけなどの症状がある場合は注意が必要です。呼吸によって胸痛が変化する場合は呼吸器の病気、食後や寝ているときに胸痛が出る場合は消化器の病気(胃食道逆流症など)の関与が考えられますが、例外も多く一概にはいえません。

1週間以上続くようであれば医療機関で診察してください。

 

どの科にかかったらいいでしょうか?

 

心臓と肺の病気は胸痛を伴う頻度が高く、緊急性を有することが考えられます。

症状が耐え難く、持続している場合は直ちに救急病院を受診するようにしてください。症状が比較的軽い場合は、内科、とくに呼吸器内科または循環器内科に受診することが望ましいでしょう。

 

どのような検査を行うのでしょうか?

 

胸痛を有する病気は前述でお話ししたように様々あります。

痛みの種類や部位などから病気を推測するために、詳しい問診を行い、身体診察を行います。まず、胸部レントゲン検査、心電図検査や血液検査を行います。

これらの検査で診断がつかず、異常がなければ、胸腹部のCT検査、腹部エコー検査などの精密検査を行うこともあります。それぞれの診断のもとに治療を行いますが、胸痛の原因がはっきりしない場合は痛み止めや抗不安薬などを投与して慎重に様子を見ていくこともあります。

 

 

色々な形で発症する胸の痛みですが、特に心臓や血管の病気と考えられる場合は緊急を要する場合があります。

そんな時は躊躇せずに救急車を呼ぶようにしてください。

 

不安な症状が継続して起きている場合は当院の内科・循環器内科にお気軽にご相談ください。

 

専門医によるご相談・問診から基本検査を行い、原因の把握を行い、必要においてはもっと詳細な検査や、必要に応じて脳神経外科等との連携、または他の専門病院のご紹介を行います。

 

 

※主に一般社団法人日本呼吸器学会ホームページ内容を掲載しております。

https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q08.html/