腰椎後方手術
腰部脊柱管狭窄症術前MRI水平断
腰部脊柱管狭窄症術後MRI水平断
腰部脊柱管狭窄症術前MRI矢状断
腰部脊柱管狭窄症術後MRI矢状断
手術の目的
手術によって得られるものと失うものがあります。
手術をすることによって筋肉は傷つくので、手術後に腰が重いなどの症状はでます。
手術により、症状(足の痺れや痛み)が改善する確率は一般的には90%以上望めると思います。しかし、すべて消失するというより、「改善する」「良くなる」「日常生活に耐えられる」というものであると思います。
手術方法
手術は全身麻酔で行いますが、実際、種々の手術方法があります。手術時間は患者さんの手術部位の状態によって異なりますが、どの手術法でも、通常2-4時間くらいです。ここでは代表的な二つの方法を紹介しますが、手術に際しては、患者さんにあった方法を選択します。
1.片側進入、脊柱管減圧術
多く場合、腰の後ろの皮膚を3-5cmくらい切って、後ろから圧迫を解除する手術を行います。背中の筋肉を片方だけ広げて、腰椎の後ろに達します。そして、後ろの部分(椎弓)を削り、さらに顕微鏡を使って反対側まで削ります。そこで、厚くなった靭帯を取り除き、神経の圧迫を解除します。(右の図の赤色の部分です)
2.両側進入、開窓術
1と同じように切開しますが、棘突起を真ん中で割ってから、展開します。これにより腰の周りの筋肉のダメージを少なくしようとするものです。1の片側進入と異なり、真上から見ることが出来るので、より安全に神経の圧迫を取り除くことが出来ます。しかし、棘突起という腰椎の上下の連結部分を一時的に破壊することになります。しかし、割った骨は多くの場合あとでくっつきますので、心配は要りません。
手術の危険性は?
手術そのもので命にかかわることはありません。麻酔をかけるという問題や、術後に肺炎や血栓症(エコノミークラス症候群)を起こしてしまうと生命にかかわることがありますが、これはどの手術でも起こり得ることです。
その他で起き得ることは以下の事柄です。これら全体で、5-10%程度だと思います。
1. 骨を削っているときや、靭帯を切除しているときに、神経を傷つける、あるいは切ってしまうということが起こりえます。
2. 神経は膜に包まれていてその中に髄液という水が循環しています。手術に際して神経は切りませんが、膜を傷つけ、髄液がもれることがあります。それが皮膚の下まで来て、ばい菌が入ってしまうことがあり得ます。髄液漏と呼びます。この髄液漏が出来た場合は、ヒトの血液から成分だけ抽出した「フィブリン糊」を使うことがあります。
3. この手術では、腰椎の接続部分は極力傷つけないように行います。削りすぎた接続部分は戻らないので、いつも「削り過ぎないように」と心がけています。ですので、終わってみると削り足りなかったということがあり得るわけです。その場合、症状の改善が良くないので、もう一回ということもあり得るわけです。
4. 一方、接続部分を削らないように注意していますが、これにより連結が弱まり、腰椎の「ずれ」を起こす、つまり「すべり症」を悪化させることがあります。また、グラグラが残っていると、再び圧迫を解除した部位が狭くなり、症状が再発することがあります。この4と5の二つの問題は、術後しばらくしてから判明することになります。
手術後は?
傷の痛みは3日程度続きますが、われわれが行っている方法でしたら、昔ながらの方法と異なり、手術の翌日からトイレくらいは歩いてもよろしいでしょうし、ベッドの上で座ることもできます。したがって、術後の老人ボケとか肺炎・血栓症なども起こりにくいでしょう。
傷が綺麗になった7-10日後くらいには、多くの方は退院されます。