主な脳疾患について


脳の病気には多くの種類がありますが、以下に代表的な病気の一部を紹介します。

1.     脳卒中

脳卒中の”卒”は「突然」という意味で、突然話せなくなったり、手足が動かなくなったりすることを意味しています。

脳卒中は、我が国の寝たきりの原因となる疾患の第1位で、約35%を占めており、その予防・早期発見は重要です。

脳卒中は脳の血管が詰まって起こる脳梗塞と、脳の血管が破れて起こる脳出血やくも膜下出血などに分類されますが、出血による圧迫や、脳内や心臓でできた血栓が詰まって生じる酸素不足で脳細胞が部分的に死滅し、その場所に対応して様々な障害が後遺症として残る可能性があります。

 2.     脳腫瘍

脳内にできる腫瘍で、脳圧亢進、運動障害、感覚障害、言語障害などの症状が現れます。

 

3.    アルツハイマー病

記憶力や認知力が低下し、主に高齢者に見られます。脳内でアミロイドβと呼ばれるタンパク質がたまることが原因とされています。

 

4.     パーキンソン病

神経細胞の減少により、手足の震えや筋肉のこわばりなどの症状が現れます。

 

5.     てんかん

脳内の神経細胞が過剰に活動することで、意識障害や痙攣などの症状が現れます。

脳梗塞(虚血性脳卒中)

脳梗塞とは、脳血管が詰まって血液が脳に十分に行き渡らず、脳細胞が死滅する病気です。

 

【原因】血管内で血栓や塞栓が形成されることです。これは、高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙、肥満、運動不足などの生活習慣病や、加齢、遺伝的素因などが影響して発症することが多いです。

 

【症状】突然の片側麻痺、手足のしびれ、言語障害、視覚障害、めまい、吐き気などです。これらの症状が現れた場合は、素早く医療機関を受診することが必要です。

 

【予防】生活習慣の改善が大切です。健康的な食生活や適度な運動、禁煙などが推奨されています。また、高血圧や高脂血症、糖尿病などの生活習慣病がある場合には、適切な治療を受けることも重要です。

 

【治療】 血栓を溶かす薬剤や血管を拡張する薬剤などが使われます。また、手術によって血管内の血栓を取り除く治療法もあります。脳梗塞を早期に発見し、素早く治療を開始することが、患者の回復につながることが多いです。

 

出血性脳卒中

出血性脳卒中とは、脳内の血管が破裂したり、漏れたりして、脳内に出血が起こることによって引き起こされる脳卒中です。

 

【原因】高血圧、脳動脈瘤、動静脈奇形、出血性脳梗塞、抗血小板薬や抗凝固薬の過剰な使用などが挙げられます。

 

【症状】急な頭痛、片麻痺、片側の麻痺や感覚障害、言葉が出ない、意識障害などが現れます。

 

【予防】血圧・血糖・コレステロールの管理や禁煙、適度な運動、健康的な食生活、適正な体重維持が重要です。

 

【治療】急性期には手術や血液を除去する治療が行われます。また、脳圧を下げるための薬物療法や予防のための薬物療法が行われることがあります。慢性期には、リハビリテーションが行われることがあります。

 

くも膜下出血

くも膜下出血は、脳のくも膜下にある血管から出血が生じる疾患です。

 

【原因】血管の破裂や破綻によるものがほとんどで、高血圧や動脈瘤、血液の凝固異常、頭部外傷などがリスク因子となります。

 

【症状】突然の激しい頭痛や意識障害、嘔吐、けいれんなどが現れます。症状が重くなると、失明や麻痺などの後遺症が残ることがあります。

 

【予防】高血圧や動脈硬化の治療や生活習慣の改善が挙げられます。

 

【治療】手術や薬物療法などがあります。手術は、出血した血管をクリップで止めたり、血管内治療で塞いだりする方法があります。薬物療法は、出血量の抑制や脳の浮腫みを抑えるために利用されます。治療法は症状の重さや出血量に応じて選択されます。

 

脳腫瘍

脳腫瘍は、脳内で生じる異常な細胞の増殖によって生じる疾患であり、一部が悪性であり、重篤な影響を及ぼす可能性があります。

 

【原因】 脳腫瘍の原因は不明ですが、一般的には遺伝的な要因や環境因子などが関与すると考えられています。脳に腫瘍ができると、通常、脳内の神経や血管に圧迫をかけ、その機能を妨げたり、脳腫瘍自体が発作や痙攣を引き起こすこともあります。

 

【症状】 脳腫瘍の症状は、腫瘍の種類、大きさ、位置によって異なりますが、以下のような症状が現れることがあります。

・頭痛、吐き気、嘔吐 ・意識障害、めまい、失語症 ・知覚障害、しびれ、筋力低下 ・発作、痙攣 ・視力障害、聴覚障害。

 

【予防】 現時点で、脳腫瘍を完全に予防する方法はありません。ただし、健康的なライフスタイルを維持することや、喫煙やアルコール摂取を控えることなどは、脳腫瘍の発症リスクを減らすことができます。

 

【治療】 脳腫瘍の治療法は、腫瘍の種類や大きさ、位置、患者の年齢や全身状態によって異なりますが、以下のような方法があります。 ・手術 ・放射線治療 ・化学療法 ・免疫療法。

手術は、脳腫瘍の摘出に最も有効な方法であり、腫瘍が小さい場合には完全に摘出することができます。ただし、腫瘍が大きく、脳の重要な部位に近い場合は、手術が難しいことがあります。放射線治療や化学療法は、手術ができない場合や手術後に残存する腫瘍に対して行われることがあります。

 

アルツハイマー病

アルツハイマー病とは、脳細胞が徐々に死滅し、記憶力や認知機能が低下する神経変性疾患の一種です。

 

【原因】アミロイドβタンパク質と呼ばれる異常なタンパク質の蓄積による神経細胞の障害や死滅が挙げられます。また、遺伝的な要因も関与していると考えられています。

 

【症状】初期は軽度の記憶障害から始まり、次第に判断力や言語能力、思考力なども低下していきます。進行すると、身体機能の低下や行動障害なども現れることがあります。

 

【予防】脳を活性化することが重要です。適度な運動、健康的な食生活、ストレスを減らすこと、社交的な生活を送ること、認知療法などが有効です。

 

【治療】アセチルコリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬などの薬物療法が行われます。また、認知療法やリハビリテーションなどの非薬物療法も行われます。しかし、完全な治癒は難しい病気であり、現在は症状の進行を遅らせることが主な治療目標となっています。

 

パーキンソン病

パーキンソン病とは、脳内のドーパミン神経細胞の死滅によって引き起こされる神経変性疾患の一種です。

 

【原因】原因はまだ不明ですが、遺伝的な要因や環境的な要因が関与しているとされています。

 

【症状】筋肉のこわばり、震え、動作の遅延、姿勢の不安定、表情の乏しさなどが現れます。また、精神症状としては、うつ病や不安、認知症などが現れることがあります。

 

【予防】運動や栄養バランスの良い食生活が重要です。また、喫煙や酒類の過剰摂取を控えることも予防につながるとされています。

 

【治療】ドーパミン補充療法が中心となります。また、抗コリン薬やMAO-B阻害薬などの薬物療法や、深部脳刺激療法などの手術療法も行われます。リハビリテーションなどの非薬物療法も重要です。治療によって症状の改善が期待できますが、現在のところ完治は不可能です。

てんかん

てんかんは、脳の神経細胞の異常な活動によって発作が起こる、神経疾患の一つです。

 

【原因】遺伝的な要因や脳の形態的な異常、外傷や感染症、脳卒中などが関与するとされています。ただし、原因が特定できない場合も多くあります。

 

【症状】短時間の意識喪失やけいれん、異常な感覚、視覚や聴覚の幻覚などがあります。

 

【予防】てんかんが原因で発作を引き起こす原因物質を避けること、十分な睡眠と栄養をとることが重要です。また、ストレスを避けることも効果的です。

 

【治療】抗てんかん薬の服用が中心的な治療となります。手術療法も行われることがあります。また、生活習慣の改善やリラックス法の実践などの非薬物療法も有効です。治療によって発作の頻度や重症度を軽減することができますが、治療にも個人差があり、医師の指導の下で行う必要があります。