脳疾患と心臓疾患の原因となる動脈硬化
頸動脈(けいどうみゃく)は心臓から脳に血液を送りだしている大切な太い血管です。
この血管に壁にコレステロールなどがたまり、血管が硬くなったり狭くなったりして血流が悪くなる状態が動脈硬化です、動脈硬化を放っておくと脳卒中(脳梗塞・脳出血)や心臓病(心筋梗塞・狭心症)など、重い病気を引き起こす恐れがあります。
【脳梗塞】
脳の血管が細くなったり、動脈の壁に付着していたプラークがはがれて血栓となったものが脳の血管を詰まらせたりして、脳の細胞がダメージを受けた状態です。血管性認知症の一因となることもあります。
【脳出血】
動脈硬化が進行すると、もろくなった脳の動脈が破裂して、脳内に出血することがあります。
【心筋梗塞】
冠動脈(心臓自体に酸素や栄養を供給している血管)の血管が細くなったり、動脈の壁に付着していたプラークがはがれて血栓となり心臓の血管を詰まらせたりして心筋(心臓を動かす筋肉)が障害を受け、心筋細胞が壊死した状態です。
【狭心症】
冠動脈の動脈硬化によって血管が細くなり、心筋が一時的に酸素不足となって起こる疾患です。発症すると締め付けられるような胸の痛みや苦しさを感じることがありますが、多くの場合安静にしていると数分でおさまります。
動脈硬化は初期症状がほとんどなく自覚症状もないため、定期的な健康診断などで見つかることが多く、自覚症状がみられるときにはすでに動脈硬化の進行が起きている可能性があります。
男性40代、女性50代からのチェック
冠動脈疾患や脳血管障害などの動脈硬化疾患の発症リスクや死亡リスクは、加齢に伴い増加することが指摘されています。とくに、動脈硬化性疾患が増えるのは男性で50代以降、女性は60~70代以降です。
また、偏った食生活、運動不足、タバコを吸うなど、生活習慣の乱れによって動脈硬化が起こり易くなります。
動脈硬化を早期に発見し、動脈硬化疾患の予防につなげるには、男性の場合40代から、女性は50代前後から頸動脈エコー検査を受けて、血管の状態をチェックしてみてください。
また、2親等以内の家族に若年性(男性55歳未満、女性65歳未満)狭心症や心筋梗塞などの既往歴がある方は、遺伝的に動脈硬化が進行しやすい「家族性高コレステロール血症」が疑われる場合もあります。これらのリスクが心配な方は、年齢にかかわらず20~30代から検査を受けましょう。
頸動脈エコー検査でわかる事
危険な動脈硬化を調べる検査として頸動脈エコーがあります。
頸動脈の動脈硬化の有無、血管の詰まり具合、プラークの状態を調べることで、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高いかどうかがわかります。
頸動脈エコー検査でわかる事は、
1.動脈硬化の有無
頸動脈エコーで血管壁をみると、3層になっています。このうち第1層と第2層を内中膜複合体(IMC)といいます。この厚さを計測します。健康な人のIMCは1mm未満です。厚さが1mmを超えると、動脈硬化が進んでいる可能性が高くなります。
2.血管の詰まり具合
頸動脈エコーで血管壁をみると、3層になっています。このうち第1層と第2層を内中膜複合体といい、この厚さを計測します。
3.プラークの状態
血管内にコレステロールや細胞などの粥腫が蓄積し、増殖して1mmを超える隆起(プラーク)が形成されると、その裂け目に血栓ができて血管を塞いでしまいます。頸動脈エコーでは、プラークの大きさや形状、表面や内部の状態(硬さ)などを観察することができます。このプラークが剥がれて脳の血管に飛ぶと脳梗塞の原因となります。動脈硬化に伴う血管の状態をみつけることが重要です。
頸動脈エコー検査の方法
頸動脈エコー検査は、エコー検査は、超音波を調べたい部位に当てたときの反射波をとらえることで画像として体内を映し出すことができます。
超音波を伝えやすくするため首に検査用のゼリーをぬってプローブ(探触子)と呼ばれる超音波が出る機器を当て、頸動脈(首の左右にある太い血管)の状態をモニターに映し出して確認する検査です。身体の表面から行えて、X線(レントゲン)検査のような被爆がないことから、比較的身体への負担が軽い検査と言えます。
ゆっくり動かしながら反射波をモニターに映し出すことで、頸動脈の血管壁の厚さや血管内部の状態を確認していきます。
検査はベッドに寝た状態で検査を受け、検査時間は20分程度です。首にゼリーを塗り、プローブから超音波を当てる検査のため、被曝や痛み、苦痛などはありません。
動脈硬化を疑われる危険因子が多い方や、下記のような自覚症状があるなど、医師が検査を必要と判断した場合は、保険適用で頸動脈エコー検査を受診できます。気がかりのある方は医師に相談してみましょう。
●血圧が高めで、頭痛やめまいがする
●階段の上り下りなどで動悸、息切れがする
●手足の冷えやしびれが気になるなど
自覚症状がない方は、脳ドックと併用した頸動脈エコー検査も有効な検査方法です。当院では脳ドックにオプション(Cコースは基本検査)として頸動脈エコー検査を追加することが可能です。
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